芸術的なチームを作り上げたクロップ・リヴァプール

快進撃を続けてきたクロップ・リヴァプールであるが、先日のCLでアトレティコマドリードに1対0で敗れる結果となったが、去年のリヴァプールはチャンピオンズリーグ、クラブワールドカップ、UEFAスーパーカップに優勝し、さらに今年の国内リーグでは一度の引き分けがあったのみで、残りは全勝を記録し、無敗記録を更新している。

リヴァプールの最も強烈な特徴は攻撃陣の三名、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、モハメド・サラーのスリートップで、左右のマネとサラーは非常にスピードが優れており、飛び道具か弾丸かという印象を持つ、中央のフィルミーノはゲームメイカー・司令塔としての役割を担いつつ、左右のサラーとマネを非常に上手く使いこなし、ディフェンス意識も高く、ディフェンダーがパスの出しどころに困っていればかなり低い位置まで下りてきてパスをもらいに行き、積極的にゲームメイクをする。

サイドバックのロバートソンとアレクサンダーアーノルドは非常に精度の高いクロスを出す事からリーグ内で最多のアシストを取れる勢いであり、非常に攻撃的なディフェンダーである。センターバックのファンダイクは1対1で無類の強さを誇り、相手チームから言えばゴール前に立ちはだかるアルプス山脈のような存在感を持つ、さらにコーナーキックなどでのセットプレーではヘディングの強さも見せる。

セットプレー・空中戦にめっぽう強い選手というのが欲しいところではあるものの、左右からのクロスにスルーパスと非常に強力な攻撃が取れる、クロップの基本戦術はゲーゲンプレスと呼ばれる「奪われても即時に奪い返してからのショートカウンター」を基本戦術にしており、非常にスタミナを消費する戦術ながら、選手たちは「クロップのために走るぞ」と声を掛け合ってハードワークを見せている。

クロップ監督は日本の香川真司がドイツのドルトムントに居た頃に教わった経験があり「世界最高の監督」と評価している。クロップ自身も選手の愚痴をこぼす事など一切なく、基本的に選手を褒めて育てる育成方針であって、移籍獲得した選手も戦術をきっちりと体に染み込ませながらだんだんと使用頻度を上げていくという慎重さを持つ、クロップ自身も選手たちが自分のためにハードワークをしている事を知っており「人間力はチームの強さである」とコメントしている。リヴァプールに着てからもその手腕は発揮された事でリヴァプールの成績はどんどん上がって良き、今やファンが観客席にクロップのイラストが描かれたフラッグを持ち込んでいるほどファンからも愛されている監督である。

そのクロップに作られた今のリヴァプールは、左右対称に均整の取れた芸術のような印象を受けるほど完成度の高さを見せており、完璧とは言えないが、誰が抜けてもチームの完成度を可能な限り落とさないチーム作りが出来ている。ここに日本の南野がザルツブルクに在籍していた当時、チャンピオンズリーグにてリヴァプールと対戦した時、1G1Aという非常に好成績を残し、自チームに2得点を入れた憎い相手選手でありながら、その南野を見るクロップの顔は笑顔がこぼれていた。その年の末に南野はクロップに引き抜かれたわけである。

上記したように、クロップは移籍で獲得した選手をいきなり使うような事が極めて少ない監督であり、まずチームに馴染み、戦術に馴染むまでじっくりと時間をかけてから起用を始めるのだが、南野はすでに数試合をこなしているところを見ると、そこそこの期待はされているものと思われる。選手の獲得に関して、選手を見る目にもクロップは定評があり、クロップに引き抜かれた選手が大失敗した事例は極めて少ないために、日本人が南野にかけられる期待は大きなものとなっている。クロップ自身も南野が早くチームに馴染むよう、南野が所属していたザルツブルクに在籍していた経験のあるサディオ・マネとナビ・ケイタの間のロッカーを南野のロッカーとして用意した。