その男、久保建英

近頃世間を騒がせている久保建英だが、彼の能力を他の選手と詳しく比較してみた人はそれほど多くないかもしれない。果たして日本の至宝と言われる久保建英の能力とは、現時点でどのようなものなのかを解説していきたい。

幼少期にサッカーの才能を見出され日本のユースクラブからバルセロナの下部組織へ渡った久保は、デビュー以前から知る人ぞ知る日本期待の星といった存在であったが、まだその才能が発揮される場面は少ないように見える、彼の才能はそのドリブルセンスにあり、代表に選出されて出場したコパアメリカでの試合や、その他所属チームのリーグ内での試合でも、前面に二人居ようが後ろに二人抱えて居ようが彼のプレイはもう止められないところまで来ている。

一般的な選手であれば前方で二人の選手が居た場合に、安全策を取り無理に抜こうとはせず横や後ろにいったんパスを戻す選手が多い、それはミスをしてボールを奪われた時に一気にカウンターを食らう危険性を避けるためや、個人的な成績や信用の問題もあるが、まず二人を抜くような技術を持つ事が難しく、そして実際に二人を抜こうというその場の選択をするには、メンタル面の強さ、二人居ようが抜いてやるという気の強さと、技術に裏打ちされた自信が必要であるためだ。一般的な選手ではなかなかこの領域に到達する事はできないが、久保はすでにこの領域にあり、あと壁をもう1枚2枚超えた能力を身に着けた場合に、それはメッシやクリスティアーノ・ロナウドの領域まで到達する可能性をちらつかせている。

また、幼少期から一流の環境でプレイしてきたことによるプレイ面での精神的な余裕を持ち、焦る事がほぼなく、相手に挟まれても落ち着いたプレイができる選手である。以前までは年齢の問題もあってまだ体が成長しきっておらず、フィジカルの面、体の強さの面で大人に負けてしまう場面も多かったが、最近ではその問題も克服しつつあり、過去の日本代表に存在した、中田英のような、頭の高さが一定でぶれないドリブルも見せ始めた。

久保のドリブルに似ているのは現レアル監督のジダンである、ジダンのドリブルはトップスピードがそれほど速いものではないが、ボールを蹴りだす力が強すぎると、足からボールが離れすぎてすぐに奪われてしまうが、ボールの蹴りだす力の調節と歩幅の調節が上手なためか、ボールが足に吸い付いたようなイメージであり、相手選手はどのタイミングで足を出しても、その前にジダンは相手をかわしてしまうというような、いわゆる「ふところの深いドリブル」をする選手であったが、久保のドリブルもまさにそれを見て居るかのようなドリブルの性質を持っている。

幼少期からの経験から精神的な余裕を持ってプレイができるためか、そのパスをするときの視野も広く、他の選手よりも比較的にチャンスメイクをする場面も多い選手と言える。

最近ではレアルマドリードからマジョルカにレンタル移籍をされて、残念がっている日本のファンも多いが、日本が何度も敗北を喫しているコロンビアのエースであり、日本でも人気の高いハメスロドリゲスも最近までレアルからドイツトップチームのバイエルンミュンヘンへレンタルされて帰ってきたばかりで、今からレギュラーに定着できるかどうかというレベルであり、次世代の天才と言われているウーデゴールも現在数年間レンタル中で、久保と同年代のヴィニシウスという例外もあるが、レアルのレギュラーになるにはこういった武者修行は最近避けて通れないところが強い。

マジョルカへ渡った今でも、変わらず動向に目が離せない選手である。